先日、うちの患者さんから、「吐血と血便をするので、診て欲しい」と電話がありました。
スタッフ一同「まさかパルボ?」とも思いましたが、この子はちゃんとワクチンを打っているし、違いそう。さて、何だろう?と思っていると、患者さんが来院。
車から運ばれてくる姿を見て、私の口から
「エマージェンシー!」の声が出る。
緊張するスタッフ。
飼い主さんに担がれてきた中型犬は、自立はできない状態。床に点々と血がしたたり落ち、肛門と口の周辺が血糊でべっとり。意識も混濁している様子。
いったい何があったの?
飼い主さんも帰宅したらこの様な状態になっていたとのことで、詳細は不明。とにかく留置を取れるうちにとる(ショックをおこすと血管が縮んで注射が出来なくなるので留置針を刺しておく)。
うちの病院はエマージェンシーが多いせいか、スタッフが手慣れており、こういうときも落ち着いて処置が進みます。
程なくX線撮影、血液検査などがおこなわれました。
結果は、薬物中毒。
毒の成分こそ分かりませんが、かなりきつめの毒の様。幸い、すぐに吐いたようで体には残ってはいないものの、吸収された毒により、肝臓がやられてしまっています。全ての肝酵素が上限を振り切ってます。ここまでひどいのは初めてかも。
入院して集中治療が始まります。幸い、もう1人の獣医に診療を見て貰いながら、私はこの子にかかりっきり。
入院して程なく大量の吐血。血液のような血便も止まらない。
抗ショック系の薬剤を打てるだけうち、点滴で止血剤と肝臓系の薬を流します。
「この子は、明日まで持たないかも・・・・」
何度も、不安がよぎりますが、やれることをやれるうちにしておく! これが、私の臨床の心得です。
1時間程の格闘の末、ようやく状態がおちつき、一息つきます。
「誰がこんなコトを!!」
みんな頭の中にはこの言葉浮かんできますが、今はそんなことより治療が優先。この夜は徹夜の看病でした。
飼い主さんは、その後、警察に被害届出を出し、私の病院にも警察官が来ました。詳細は書けませんが、可能性は2つ。自宅で犬をつないであるところに毒物を投げ込まれたか、散歩中に毒物を食べてしまったか。どちらにせよ、故意に犬を殺そうとしたとしか思えません。
自宅でつないでいるから安心というのはもう過去の時代の話しなんでしょうか・・・・
最近、通り魔やら衝動殺人やら何かと物騒な世の中。実際に、この手の犯罪者は、犬や猫を殺すことから始め、やがて人間を襲うようになるという。ある意味、動物の狩猟本能のように弱者から狙い始める。通り魔事件でも、「殺すのは誰でも良かった」と証言しているものの、実際に被害にあっているのは自分より弱そうな相手ばかり。たかが犬や猫、ニュースにもならない小さな犯罪かもしれませんが、根は深く、決してあなどるべきではないと思います。
この子は、次の日、幸いにも命はとりとめましたが、まだまだ立てられる状態ではなく、意識も弱かった。多量の薬による治療が続き、自力でご飯を食べられたのは入院5日目でした。その後徐々に回復し、11日目にようやく退院となりました。
ほんとに良かった。あなたは強いよ。
正直、何どもダメかもと思ったけど、あきらめなかったからね。
あなたも、私もね。
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